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エクセル労務管理

【新型コロナ】 雇用調整助成金用の実績一覧表をワンクリック作成する方法

20/05/21 by イクマ ヒロユキ 20 コメント

新型コロナウイルスの影響で休業せざるを得ない時の補助金のひとつに雇用調整助成金があります。

難点は簡略化されたとはいえ、必要書類が多く準備するのは大変ですよね。

特に、休業申請の対象従業員が多い場合「休業・教育訓練実績一覧表」は複数枚作成する必要がありデータを入力するのがとても面倒です。

なぜなら、厚生労働省のサイトで用意されたエクセルファイルはお役所が作る「神エクセル」の典型で、箸にも棒にもかからない入力フォームだからです。

当助成金のオンライン申請フォームもありますが、申請書作成作業はそれほど楽になりません。この神エクセルで申請書を作成しなければならないのは一緒です。

なぜなら、最終的にオンライン申請フォームに作成したファイルを添付する必要があるからです。

 

そこで、休業・教育訓練実績一覧表を自動作成するプログラムをVBAで作りましたので、シェアいたします。

このプログラムでは被保険者用の実績一覧表(様式9)と被保険者以外用(様式2)の実績一覧表をそれぞれ作れます。

かかる時間は100人分で数秒~十数秒です。

(当然のことですが、ネット上のどこかに個人情報や会社情報を転送するようなコードは含まれていません)

ソースコードを確認したい方はgithubでどうぞ。
https://github.com/ikuma-hiroyuki/koyouchousei_shinsei

 

使用手順を以下で解説していきます。

1. 自動作成プログラムをダウンロード

Youtubeでも使い方の解説をしています。

 

まずは以下のエクセルファイル(実績一覧表自動作成プログラム)をダウンロードして下さい。

アイコン

休業・教育訓練実績一覧表_作成.xlsm

1 ファイル 70.38 KB
ダウンロード

 

ファイルを開くと下の画像のような警告が表示されますが、「編集を有効にする」をクリックして下さい。

 

続いてセキュリティの警告が現れますが、これも「コンテンツの有効化」をクリックして下さい。

 

2. 全体設定を全て埋める

ダウンロードしたエクセルファイルには「全体設定」というシートがひとつだけ存在しています。

この情報をもとに実績一覧表を自動作成しますので黄色く塗られたセルを全て埋めてください。

注意事項は以下の通りです。

  • 日付欄に西暦で入力すると和暦で表示されます
  • 事業所番号の桁数(4桁-6桁-1桁)が違うとエラーメッセージが表示されます
    (-も入力して下さい)
    (例: 1234-123456-1)
  • 所定労働時間は整数で入力してください
  • 行、列の追加削除はしないで下さい

 

3. 休業・教育訓練した労働者のデータをCSVファイルで保存する

労働者のデータはCSVファイルでご用意ください。CSVファイルはエクセルファイルと似ていますが別のものです。

CSVファイルの作り方がよくわからない方は下記の「CSVの作り方」を参照して下さい。

 

参考までに、私がCSVファイルを作った方法を記載します。

私の勤務している会社では従業員の保険番号を「PCA給与DX」という給与計算ソフトで管理しています。

今回の実績一覧作成ではPCA給与DXから氏名と保険番号をCSV出力しました。

次に所定労働時間、労働者ごとの休業日数などは内製した勤怠管理ソフトで管理していますので、そちらもCSV出力。

この2つのCSVをエクセルで統合し、休業実績一覧に用いました。
(統合にはVlookup関数などを使用)

PCA給与DXで保険番号を管理している
給与計算システムから必要項目をCSV出力するための設定画面

 

列の並び・入力規則に注意

労働者のデータを準備するときは列の並びを以下のようにしてください。
(タイトル行はあってもなくても構いません)

列 入れるデータ 入力規則
1列目 氏名
2列目 被保険者番号 – (ハイフン)も入力してください
3列目 月間所定労働日数 整数で入力
4列目 全日休業日数 整数で入力。該当なしは0と入力して下さい。
5列目 短時間休業時間 10進法で入力。該当なしは0と入力して下さい。
6列目 教育訓練日数
(被保険者以外用の場合この列は不要です)
1日を1、半日を0.5で入力。該当なしは0と入力して下さい。

サンプルCSVファイルは以下からダウンロードできます。

自動作成プログラムにこのサンプルを読み込ませれば動作のイメージがつかめると思います。

アイコン

実績一覧表用サンプルCSVファイル

1 ファイル 6.39 KB
ダウンロード

※サンプルのデータは全て架空のものです。

 

データ取込時の処理

参考までに、データを取り込むときに以下のように処理を行っています。

 

なお、被保険者用は被保険者番号が入力されていない行は取り込みません。

被保険者以外用の場合は反対に被保険者番号が入力されていない行だけ取り込みます。

 

その他は、以下のとおりです。

  • 氏名が空白の行が含まれていた場合エラーで止まります
  • 被保険者番号の桁数(4桁-6桁-1桁)が違う場合はエラーで止まります
    (被保険者用のみ)
  • 所定労働日数は小数点以下切り捨て
  • 全日休業は小数点以下切り捨て
  • 短時間休業時間は0.5単位で切り捨て (=30分単位)
    ※ 1時間未満だった場合、0時間で取り込みます
  • 教育訓練日数も0.5単位で切り捨て (=半日単位)

※なお、サンプルCSVファイルの短時間休業の中にはあえて0.5単位になっていないデータが含まれています(6,9,10行目等)。

自動作成プログラムで実績一覧表を作るときには0.5単位で丸められて数値が出力されますので、確認してみて下さい。

 

CSVの作り方

CSVファイルの作り方がわからない方のために作り方を簡単にご説明いたします。

まずはエクセルで労働者のデータを用意します。

データの用意が終わったらファイルを保存するときに以下の手順で保存するとCSVファイルになります。

※CSV UTF-8 で保存するとエラーになるので注意
  1. ファイルをクリック
  2. 名前を付けて保存をクリック
  3. CSV(コンマ区切り) (*.CSV)をクリック
    ※このとき、CSV-UTF-8 で保存すると自動作成プログラム読み込み時にエラーになるので注意してください。
  4. 保存をクリック

ちゃんとCSV形式で保存できたか確認するためには

  1. ファイルのアイコンを右クリック
  2. プロパティを表示して
  3. 「ファイルの種類」がCSVファイルになっていればOKです

 

4. 実績一覧表の原紙を自動作成プログラムと同じフォルダに入れる

厚生労働省の雇用調整助成金様式ダウンロードページから「新様式特第9号 休業・教育訓練実績一覧表」もしくは、「様式様式第2号(3) 休業実績一覧表」(以下、原紙と呼称)をダウンロードしてください。

 

注意点は大まかに以下の3つです。

  1. 原紙のシート名は変えないでください。
    (変えるとプログラムが正常に作動しません)
  2. 原紙には”基本的”に手を加えないで下さい
  3.  ただし、以下の項目については手を加えることをオススメします
    1. 改ページ範囲 (2枚目の設定がおかしいので直す) 
      (5/24時点では修正されています)
    2. 「休業」「教育訓練」のチェックボックスにあらかじめチェックを入れておく

5. 自動作成プログラムの「一覧表作成」ボタンを押す

 

最後に上記画像の一覧表作成ボタンを押します。

ボタンは2種類あり、被保険者用一覧表(様式9)と被保険者以外用(様式2)の一覧表をそれぞれ作成できます。

ボタンを押すと労働者ごとのデータが入ったCSVファイルを指定するダイアログ(問合せ画面)が表示されます。先ほど用意したCSVファイルを指定して下さい。

 

繰り返しになりますが被保険者用では保険番号が入力されていない行は取り込みません。

反対に被保険者以外用では保険番号が保険番号が入力されている行は取り込みません。この2点に注意してください。

 

あとは自動的に実績一覧表が作成されるのを待つだけです。100人程度の人数であれば数秒~十数秒程度で完成します。

 

以上です。

おわりに

バグを発見したらご一報いただければ幸いです。

 

カテゴリエクセル労務管理

エクセル勤怠管理で簡単に時刻表示する7つの方法

18/02/04 by イクマ ヒロユキ コメントを書く

エクセルで勤怠管理するときに、時間表示のやり方がわからない方は多いです。実は時間表示は書式設定を理解することで、思い通りに時間表示できるようになります。

書式設定とは、「入力された数値をどのように表示するのか」を設定するものです。例えば、勤務が深夜までおよび、退勤時間が午前3時になったとき、「27:00」と表示したい、または下の図のように残業時間の合を24時以上の時刻で表示したいことがあります。

このようなときは、書式設定で下の図のように[h]:mmと設定します。

書式設定には、この他にも種類があり、さまざまな時間表示に対応できるようになります。書式設定を理解することで、思い通りに時間表示でき、事務作業の効率化につながります。そこでこのページでは、書式設定について詳しく解説していきます。

 

「書式設定」が必要な理由

なぜ書式設定が必要なのかというと、先述したように、退勤時間を「27:00」と表示したい場合や、残業時間の合計を表示したいとき、初期設定ではうまく表示できない場合があるためです。

他にも残業時間を管理するときは、誰が何時間残業しているか、規定の時間まであとどれくらいなのかを、わかりやすく表示すると管理しやすいためです。

例えば下の図のように、残業時間が30時間を超えたらセルを黄色に、42時間を超えたらオレンジ色、72時間を超えたら赤にすると、ひと目で状況を把握することができます。

他にも、曜日によって自動的にセルの色を変えたり、日付と曜日を同時に表示したりできます。つまり、書式設定により、勤怠管理を効率化できるのです。

【基礎編】書式設定の方法

それでは、書式設定の基本的なやり方を解説します。ここでは、時刻が一桁と小数点の数字(シリアル値)で表示されてしまったときに、時刻表示にもどす手順について解説します。

1. 書式設定したい範囲を選択する

2. 「セルの書式設定」をクリックする

選択したセルの上で右クリックして「セルの書式設定」をクリックします。

3. 表示したい書式を選ぶ

「セルの書式設定」をクリックすると下の図のようなウィンドウ(ダイアログ)が現れます。「表示形式」、「時刻」、「種類」の順に選択し、最後にOKボタンをクリックするか、エンターキーを押します。

4. 完成

シリアル値が時刻表示されました。

以上の手順が書式設定の基本的な方法です。

【応用編】書式設定の方法

時刻表示の初期設定では、「時」が一桁とき(9:01など)は、そのまま「9:01」と表示されます。しかし、「時」二桁(09:01)で表示したいことや、「秒」まで表示したいことがあります。

そのようなときは、下の図のように「種類(T)」にh(hour:時)やm(minutes:分)、s(seconds:秒)を組合せて入力します。

セルに「9:3:6(9時3分6秒)」と入力したときを例として、文字の組み合わせで、実際に表示される時刻を以下の表にまとめました。

書式設定 表示
h 9
hh 09
h:m 9:3
h:mm 9:03
hh:mm 09:03
s 6
h:m:s 9:3:6
hh:mm:ss 09:03:06
m 1
mm 01

※注 mとmmは単独で使用すると、月(month)表示になるので注意。(この例では1月になります)

mの前にhか(h:mなど)、mの後ろにs(m:sなど)を入力すると、分として表示されます。

24時以降を表示する方法

深夜勤務した時や、時間を合計する場合、24時以降を表示したいことがあります。例えば、「午前3時」を「27:00」と表示したいときや、1ヶ月間の残業時間を表示したいときなどです。

先ほどの「3. 表示したい書式を選ぶ」の手順では24時以降を表示できません。しかし、書式設定で[h]:mmと入力することで、24時以降を表示することができるようになります。

24時間以上を表示できるようになると、正しく時間管理ができるようになります。勤務が深夜までおよんだ場合や、時間を合計するときは、この設定を行わないと正しく表示されないことがあるため、必須の設定です。

[](角括弧)で囲むと24時以降を表示できる

時刻表示文字(h、m、s)を[](角括弧)で囲むと、24時あるいは60分、60秒以上を表示できるようになります。角括弧キーは下記の場所にあります。

主な組合せを下記の図にまとめました。例として、「120:25:06」のときに表示される組み合わせです。

書式設定 表示 解説
[h]:mm:ss 120:25:06 24時以上を表示
[m]:ss 7225:06 60分以上を表示

(7,225分6秒)

[s] 433506 60秒以上を表示

(433,506秒)

[d] 5 5日

 

簡単に曜日表示する方法

勤怠管理では、日付の横に曜日を表示させたいことがあります。よくある方法は、下の図のように、曜日を入力するセル別に設け、手入力する方法です。

しかし、この方法は入力に手間がかかり、入力ミスも起きてしまうため、あまり良い方法ではありません。そこでオススメの方法は、書式設定によって自動的に曜日を表示させる方法です。書式設定すると、下の図のように、日付の横に曜日を表示することができます。

こうすることで、入力ミスを防ぐことができ、管理しやすくなります。また、日付とは別のセルに曜日を入力する必要が無いので、業務の効率化になります。

1. 書式設定したい範囲を選択します。

2. 書式設定の「種類(T)」に「yyyy/m/d/ (aaa)」と入力します。

分類(C)のなかの「ユーザー定義」を選択し、種類(T)に「yyyy/m/d (aaa)」と入力し、OKボタンをクリックします。

時刻と同じように、書式設定の「種類(T)」に、特定の文字を入力することで、日付の表示方法が変わります。曜日の書式設定に使える文字の組み合わせを以下の表にまとめました。(入力値は2020/12/1)

書式設定 表示
yyyy/m/d (aaa) 202/12/1(日)
yyyy/m/d (aaaa) 2020/12/1(日曜日)
yyyy/m/d (ddd) 2020/12/1(Sun)
yyyy/m/d (dddd) 2020/12/1(Sunday)
ggyy”年” m”月” d”日” (aaa) 令和2年 12月 1日

 

記号の意味は?

上の表のyはyear(年)、mはmonth(月)、dはdateです。先述した【応用編】書式設定のやり方と同様、yyとすると西暦の下二桁だけ表示したり、mmとすると月を二桁表示できます。

gはgengo(元号)です。区切り文字を「 / (スラッシュ)」のかわりに年、月、日などの文字に置き換えることもできます。この場合、文字を「 “(ダブルコーテーション)」で囲います。キーの場所は下の図の赤いところにあります。

さらに、半角スペースを入れることで見やすくなります。

曜日によって文字の色を変える方法

勤怠管理では、土曜日・日曜日など特定の曜日のときだけ、下の図のように、文字の色を変えて表示したいことがあります。

このとき、ひとつひとつ目で確認して文字の色を変えると、大変な手間がかかってしまいます。そこで以下の手順のように条件付き書式設定することで、特定の曜日のときだけ色を変えることができ、業務の効率化になります。

1. 書式設定したい範囲を選択する

2. ホームタブの「条件付き書式」、「新しいルール」をクリックする

3. 書式ルールの編集で「数式を使用して、書式設定するセルを決定」をクリックし、数式を入力する

下の図の「次の数式を満たす場合に値を書式設定(O)」とは、入力した数式が特定の値になったときだけ書式設定を行うための設定で、「=WEEKDAY(A2)=1(WEEKDAY関数の答えが1)」のときだけ書式設定する、というものです。

「WEEKDAY関数」とは

WEEKDAY関数は、曜日を数値に置き換える関数です。日曜日であればWEEKDAY関数の値は1になり、土曜日であれば7になります。下の表は各曜日とWEEKDAY関数の値の対応表です。「=WEEKDAY(A2)=●」の●の数字を変えることで任意の曜日で書式設定することができます。

曜日 ●の数値
日曜日 1
月曜日 2
火曜日 3
水曜日 4
木曜日 5
金曜日 6
土曜日 7

4. 設定したい色を選択する

曜日で変えたい色を選択します。見やすい色にしましょう。

色を選択したら、「書式のルール設定の編集」のOKボタンをクリックして完成です。ここでオススメの色は、土日休みの場合であれば、日曜日が赤、土曜日が青です。なぜなら、多くのカレンダーでこの色の組み合わせだからです。こうすることで、誰が見てもわかりやすい勤怠管理表になります。

以上の手順で、日曜日のときに文字を赤くする設定になりました。同様に、土曜日を青くしたい場合は、数式を「=WEEKDAY(A2)=7」にします。

残業時間数によって自動的にセルの色を変える方法

先述したように、残業時間数によって、自動的にセルの色を変えることで勤怠管理を効率化することができます。例えば、規定の残業時間上限まであとどれくらいか、規定を超えた従業員がどれくらいいるかを、ひと目で把握することができます。

下の図の右表が、セルの値によって自動的に色が変わるように書式設定したものです。ここでは、セルの値が32時間以上で黄色、42時間以上でオレンジ色、72時間以上でセルの色が赤く場合につてい解説します。書式設定の手順は以下のとおりです。

1. 書式設定したい範囲を選択し、条件付き書式設定のなかの「ルールの管理」をクリックする

2. 書式ルールを設定する

ルールの管理をクリックすると下の図のようなダイアログが現れるので、「書式ルールの表示(S)」が「現在の選択範囲」になっていることを確認し、「新規ルール」をクリックします。

下の図の順番で設定していきます。「3.  32:00と入力」の部分は、60進法で時間管理している場合の設定です。10進法で管理している場合は、「32」と入力します。次の手順「4. 書式(F)」ではセルの色を設定します。

特別条項付き三六協定を結んでいても45時間(変形労働制の場合は42時間)を超える時間外労働ができるのは、年間6回までです。そのため、45時間より10時間ほど前を最初の警告とします。黄色がよいでしょう。

3. 次の書式ルールを設定する

続いて、特別条項である45時間(変形労働制の場合は42時間)を超えたときの警告色を設定するため、再度「新規ルール(N)」をクリックします。

時間設定部分に「42:00」と入力し、その他の部分は先ほどと同様に設定します。セルの色は黄色と赤の中間であるオレンジ色がよいでしょう。

「次の値より大きい」とは?

「次の値より大きい」と「次の値以上」の違いに注意が必要です。「次の値以上」は42時間ちょうども黄色くなりますが、「次の値より大きい」は42時間ちょうどでは色は変わらず、42時間を1秒でも超えると黄色くなります。

特別条項付き三六協定の上限回数の基準は「ちょうど」ではなく、「1秒でも超えると」です。そのため、ここでは「次の値より大きい」に設定します。

42時間の設定ができたら、最後に72時間を超えたときの警告色を設定します。過労死ラインといわる80時間になってから警告を出しても遅いため、それより10時間程度前に最終警告を出します。時間設定部分を「72:00」、他の手順はこれまでと同様です。警告色は赤がよいでしょう。

下の図のように設定できたら、OKボタンをクリックして完成です。

注意点

下の図のように、上から黄色、オレンジ色、赤の順で並んでいると、上手くいきません。

黄色、オレンジ色、赤の並び順だと、下の図のように黄色しか書式設定されません。

 

この並び順は、書式を設定する(この例ではセルに色を塗る)優先順位です。上の図は、黄色が一番上に来ていますので、黄色を最優先に書式設定してしまいます。並び順は、表示順を変える矢印ボタンで変えることができます。

書式設定をコピーして設定の手間を省く方法

これまでの解説では、書式設定したい範囲をあらかじめ選択してから設定しました。しかし、実務では書式設定したい範囲が変わることはよくあります。ただその都度、設定したい範囲を選択してから設定していると手間がかかってしまいます。

書式設定は、コピーして貼り付けることで同じ設定をコピーでき、設定の手間を省くことができます。ここでは、例として条件付き書式設定のコピーを解説しますが、条件付き書式設定に限らず、時刻表示の書式設定などでも同様の手順でコピーして貼り付けできます。

1. 書式設定されたセルを選択し、右クリックで表示されるメニューのなかの、「コピー(C)」をクリックします。

2. 同じ条件付き書式に設定したい範囲を選択し、右クリックし「形式を選択して貼り付け(S)」をクリックします。

3. 下の図のように「書式(T)」を選択し、OKボタンをクリックします。

以上の手順で、書式設定を簡単にコピーすることができます。

まとめ

ここまでご説明してきた「書式設定」によって、勤怠管理にかかせない「時間表示」を思い通りにすることができるようになります。今回解説したものは、基本的な内容ですが、基本の組み合わせによってあらゆるパターンに対応することができます。

勤怠管理業務を効率化するためにも、ここでお伝えしたテクニックを駆使し、効率よく事務作業を行いましょう。

カテゴリエクセル労務管理

勤怠管理とはなにか? 目的とオススメの管理方法を解説します

18/02/04 by イクマ ヒロユキ 2 コメント

勤怠管理とは、従業員の出勤時間・退勤時間を記録することにより、労働時間を把握することをいいます。

勤怠管理により得られた労働時間データは、給与計算や労働時間調整、投資判断など、さまざまな企業活動に役立てるための基礎になります。

これらの中でも特に、勤怠の情報が活かされる例として「残業時間削減」があります。近年は過度な残業が問題視されており、残業時間がひと月80時間を超えると「過労死ライン」といわれます。これを超えるとうつ病・自殺・過労死の危険性が増すことがわかっているからです。

過去には2008年の大手居酒屋チェーンや、2016年大手広告代理店が過労死事件を起こしました。これらは共に月の残業時間が100時間を超える長時間残業のため発生したと考えられています。この事件により、過労死してしまったご本人や遺族はもとより、企業にとっても取り返しのつかない損害を与えました。

このような悲惨な事故を起こさないために、企業は従業員の労働時間(残業時間)を適切に管理することが求められます。そのため必要になるのが、勤怠管理により得られる労働時間データをもとに、従業員や部署ごとに対策を打つ必要があります。例えば「人手を増やし負荷を分散させる」「納期調整する」「受注しない」などの対策があります。

勤怠管理により得られる労働時間データは、この他にも人事評価や原価管理などにも利用されます。そのため、勤怠管理のデータは「良質のもの」でなければなりません。良質とは、「正確性」「リアルタイム性」「汎用性」3つを満たしたものです。

なぜなら勤怠管理のデータは前述したように、労働時間の管理だけでなく、給与計算や、人事、会計など、あらゆる企業活動に利用するからです。また、勤怠管理をするのにコストがかかりすぎるのも好ましくありません。

そこでページでは、勤怠管理の良質なデータを、コストをかけずに取る方法ついて説明します。また、企業規模に合わせたおすすめの勤怠管理の方法も解説していきます。

勤怠管理で得られたデータの使われ方

まず、勤怠管理で得られたデータが、どのように活用されるのかについて説明します。

勤怠管理とは、労働時間を記録、集計し、労働時間データを管理することです。ここで得られた情報は、その後さまざまな企業活動に利用されます。その代表的なものに「労務管理」「原価管理」「投資判断」の3つがあります。それぞれをくわしく説明します。

1. 労務管理

労務管理とは、給与計算・労働時間調整・人事評価など、「社員の管理」に関わる業務です。勤怠管理のデータは労務管理でも利用されます。ここでは最も一般的な活用例として、残業時間管理と給与計算について解説します。

残業管理

社会人であればほとんどの方が残業をしたことがあると思いますが、実は企業ごとに残業してもよい時間には上限が決められています。この上限時間は、会社(使用者)と従業員代表の間で取り決めが行われており、正式な文書に記載されています。

その上限時間が書いてある文書を「三六協定」(通称サブロク協定)といい、「残業は年間360時間まで」のように具体的な数字が書かれています。サブロク協定で定められた限度を超えた残業をさせると、会社は労働基準法違反(法律違反)になります。

労働基準法違反が発覚すると、程度が軽い場合は是正勧告書、悪質とみなされると使用者・管理者が起訴されたり、会社が営業停止処分になったりします。

また、法律に違反していなくても、冒頭で書いたように残業時間が多いことにより、従業員が体調不良やうつ病、最悪の場合には自殺や過労死になることがあります。

そのため、会社はこのような問題が起こらないよう、社員一人ひとりの残業時間を毎日把握する必要があります。このときに利用するのが勤怠管理データなのです。

給与計算

給与には「基準内給与」と「基準外給与」があります。基準内給与は、就業規則に定められた所定の労働時間を働いた場合に支払われる基本給と、各種手当が含まれます。

基準外給与は、就業規則で定められた所定の労働時間以上に働いた分に対して支払われる給与で、残業手当や、休日出勤手当てがこれにあたります。

このとき、給与計算するためには、「所定の労働時間分をきちんと働いたかどうか」「所定の労働時間以上に仕事をした時間は何時間あったのか」を確認する必要があります。これらを知るために、勤怠管理データが利用されます。

このように勤怠管理データは、労働時間の調整や給与計算など労務管理の基本として活用されています。この他にも人材採用から人事配置、人事評価、そして退職に至るまでの一連の流れのなかで使われます。

2. 原価管理(労務費管理)

勤怠管理データは原価管理のためにも利用されます。原価とは「製品をつくるためにかかる費用」です。例えばパソコンを製造して売ろうとする場合、材料費・設備費・労務費などがかかります。材料費には「プラスチック・液晶・配線など」があり、設備費には「加工機や工場、電気・ガス代など」が、そして労務費には「工場の作業員や管理部門の給与(人件費)」があります。

これら材料費・設備費・労務費などを合算したものが原価です。しかし原価を正確に把握できなければ、いくらで販売すれば利益が出るのかわかりません。そこで、労務費を把握するために勤怠管理データが利用されるのです。1日なん人が、なん時間働いているかを計算すれば、すぐに労務費を把握することができます。

また、労務費が把握できるとコスト削減につなげることもできます。例えば、原価を下げ利益を増やすために「組立工程の労務費を10万円、溶接工程の労務費を5万円、管理部門の労務費を20万円コストダウンしよう。」といった取り組みが可能になるのです。

3. 投資判断

勤怠管理データは「投資」の判断にも利用されます。新しい機械や設備を導入することで、生産性がどれだけ上がるのか、労務費をどれだけ削減できるのかを試算するのに利用します。

私が勤務していた会社では、勤怠管理の状況を正確に把握したことにより、設備投資として1,000万円の生産管理システムを導入することを決めました。その結果、それまで人が行っていた管理業務が全て自動化され、年間500万円の人件費削減効果に成功しました。

他にも、6,000万円する最新の板金加工機を導入することで、生産性が30%向上し、20%の納期短縮効果と、年間2,000万円の人件費削減につながりました。

どちらも勤怠管理のデータを分析することによって、無駄な人件費が明らかになり、設備投資を行なうかどうかの判断ができたためです。

大きな投資をするときは、それを導入することで、どれだけ人件費を削減できるのかが重要な判断材料になります。なぜなら人件費は、企業全体の費用の中で非常に大きなウェイトを占めるからです。

同様に、生産性も重要な指標になります。生産性は「仕事量 ÷ 労働時間」で計算し、どれだけ効率よく仕事をしているかを表します。これら人件費や生産性を算出するための基礎になっているのが、勤怠管理により得られた労働時間データなのです。

このように勤怠管理により得られたデータはその後、さまざまな企業活動に幅広く活⽤されることになります。

そのため勤怠管理では高い「データの質」が求められます。冒頭で紹介したように、勤怠管理のデータに求められるのは「正確性」「リアルタイム性」「汎用性」の3つです。

それぞれについて説明します。

勤怠管理のデータに必要な「正確性」「リアルタイム性」「汎用性」

1. 正確性 : 記録・集計が正確か

正確性とは、記録・集計が正確かどうかです。データは正確でないと価値がありません。なぜなら間違ったデータからは、間違った結論しかでてこないからです。

勤怠管理で得られるデータは、「人」に関する重要なデータです。これが不正確だと企業活動に悪影響を及ぼします。

2. リアルタイム性 : 最新の状況を反映しているか

リアルタイム性とは、労働時間データが最新の状況を反映しているかどうかです。例えば長時間残業抑制であれば、週一回の残業時間集計よりも、毎日集計したほうが素早い対応ができます。

週一回の集計では「残業時間を集計してみたら過労死ライン(残業時間が月80時間)を超えていた」といった事になりかねません。先ほどの会社では、残業時間を集計してみたら過労死ラインを超えていたことが頻繁にありました。

当時は運良く、過労死やうつ病などの労災はありませんでした。しかし労災が発生すると、企業や使用者は刑事責任として「業務上過失致死」や「安全衛生法違反」、民事責任として「損害賠償」を問われます。

毎日集計していれば、過労死ラインを超えそうな兆候がある従業員を早期発見しやすくなります。早期発見すれば、納期調整や、作業の分散といった対策が打ちやすくなります。ガンなどの病気と同様に早期発見が重要です。そのため、リアルタイム性が必要になります。

3. 汎用性 : 活用しやすいように整理されているか

汎用性とは、記録・集計したデータが、その後いろいろな⽤途に活⽤しやすいように整理されているかをいいます。

勤怠データは先述したように、人事や投資の重要な基礎データとして利用されます。そのため、必要なタイミングで、さまざまな角度から分析できなければ宝の持ち腐れになってしまいます。

勤怠データを給与計算と残業時間管理には問題なく活用できても、他の用途に使おうとすると集計に時間がかかるという会社は多いです。これは集計したデータが汎用性のあるデータになっていないことが原因です。

汎用性がないデータでは、例えば、投資判断のために「ある期間の、部署ごと平均残業時間」を集計しようとすると数時間かかってしまいます。これに加えて「集計期間を変える」、「パートは含めない」など集計条件が変わると、さらに時間がかかってしまうのです。

汎用性が高いデータにしておくことで、労務管理以外にもさまざまな角度からの集計・分析を行いやすくなります。

以上のように、勤怠管理のデータには、「正確性」「リアルタイム性」「汎用性」が必要になります。

ここまで説明したことをまとめたものが次の表です。

良質なデータ 質が悪いデータ
正確性 基本中の基本。データが正確でないと、スムーズに仕事ができない。 利益を減らしたり、給与額を間違えたり、さまざまな悪影響がでる
リアルタイム性 最新状況がすぐにわかる 集計するまでわからない
汎用性 さまざまな用途に利用しやすい 労務管理以外に使おうとすると、別途集計作業が発生する

これら3つの要素によってデータの質が決まります。ではデータの質を高めるためにはどうすればよいのでしょうか。

正確性を高めるためには

正確性を高めるには、「ヒューマンエラー」と「担当者の知識不足」への対策が必要です。

ヒューマンエラーとはデータ入力ミスや、計算ミス、勘違いなどで、人間である以上ゼロにすることができません。そのため、「複数の担当者による二重チェック」「チェックリストで確認」などの方法で対応します。

このようなチェック体制を強化することで正確なデータに近づきます。

担当者の知識不足も正確性を欠く原因の一つです。労働時間の記録方法や計算方法は、労働基準法によって定められています。しかし、担当者の知識不足、認識間違いにより処理が間違っていれば、そこから得られるデータは不正確なものになってしまいます。

担当者の知識不足を改善するには、社会保険労務士の先生に聞いたり、書籍で勉強したり、ネットで調べたりして地道に勉強するしかありません。

リアルタイム性を高めるためには

リアルタイム性を高め、最新の状況を反映したデータにするには、効率よく計算するスキルが求められます。もしエクセルで勤怠管理するのであれば、最低限「VLOOKUP関数」「IF関数」「TEXT関数」「TIMEVALUE関数」「ピボットテーブル」を使いこなす必要があります。これに加えて「FLOOR関数」「CEILING関数」が使えるとなお良いです。

効率よく計算するスキルを身につけた上で、毎日集計します。前述したように一週間に一度の集計では「気がついたら規定残業時間を超えていた」といったことになりかねないからです。こまめに素早く計算しましょう。

汎用性を高めるには

汎用性が高く、他の集計にも活用しやすいように整理するには、情報処理スキルが必要です。なぜなら、勤怠管理データは「人数×日数×項目数」の膨大なデータ量になるからです。

例えば「従業員が100人」の会社で「20日間」分の「所定労働時間・残業時間・深夜残業時間・休日出勤時間(4項目)」の集計をする場合、100人×20日×4項目=8,000個のデータになります。

この膨大なデータをさまざまな用途で手間なく使えるよう整理するのが、情報処理スキルです。情報処理スキルを身につけるためには、法律知識を身につけるときと同様に、ネットや書籍などから地道に勉強するしかありません。

自社に適したデータ集計方法を導入する

このように「正確性」「リアルタイム性」「汎用性」を高めるためには事務員の教育費用と習得までの時間がかかります。また、二重チェックをする担当者も必要で、さらに人件費がかかります。つまり、労働時間データの質を高めるためには、「大きな人件費」がかかってしまうのが一般的なのです。

しかし、確実かつ低コストで良質なデータ集計を行える方法があります。それは、「自動でデータ集計を行える勤怠管理システムを導入する」ことです。データ処理の担当者を教育して、時間をかけて集計してもらうよりも、システムに依るコンピューター処理のほうが確実で早く、コスト削減につながります。

ただ、データ集計の方法は勤怠管理システム以外にもあり、企業の規模、によって最適なものは異なります。ここからは代表的なデータを集計する方法と、その特徴について説明します。

代表的なデータ集計の方法

代表的なデータ集計の方法は次の3つです。

  1. 勤怠管理システムによるデータ集計
  2. エクセルでの勤怠管理
  3. 出勤簿で勤怠管理

これら3つの方法について、詳しく説明します。

1. 勤怠管理システムによる管理

勤怠管理システムによる管理は、ほとんど会社におすすめのデータ集計方法です。なぜなら前述したように、コンピューターによって勤怠管理事務をほぼ自動化できるからです。そのため一度導入さえすれば人件費を削減することができます。さらに自動化することで、入力ミスや計算ミスなどのヒューマンエラーをなくすことができます。

また、勤怠管理システムは労働基準法にしたがって処理するため、事務担当者への法律教育を最小限ですませることができます。さらに、システムで記録・集計したデータは、汎用性が高いです。得られたデータをどのように使うかは、企業ごとに異なります。勤怠管理システムで得られるデータはそれぞれの企業ごとで使いやすいように、整理されています。

このようなことから勤怠管理システムは、人が事務処理するよりも低コストで良質なデータを得られます。非常に便利な勤怠管理システムですが、全ての仕事を自動化できるわけではありません。

勤怠管理で自動化できる仕事は「打刻時間の記録」「打刻時間から労働時間を計算」「労働時間の集計」「残業時間や休日出勤の集計」「有給管理」「労働基準法改正への対応」など、労働基準法と会社規則で規定されている内容についてです。こうした仕事は決まったルールに従って機械的にデータを処理するだけなので、勤怠管理システムによって素早く行うことができます。

これに対して自動化できない仕事は、「システムへの従業員登録」「打刻ミス(打刻忘れなど)のチェック」「勤怠データを他の用途で使うための操作」などのことです。つまり、「システムにデータ処理をさせるための段取り」は、人が行う必要があるのです。

つまり勤怠管理システムを導入した場合、人がする仕事は「システムの段取り」だけになります。そのため、人件費を抑えられるのです。

さまざま会社が勤怠管理システムを販売していますが、なかには「規定の残業時間になったら警告を出す」「給与ソフトと自動連携」「有給申請と承認」「振替休日・代休の自動引当」などの機能をもつシステムがあります。自社に合ったシステムを選定するとよいでしょう。

勤怠管理システム導入には導入費用と運用費用がかかります。しかし、人による管理よりも低コストで良質なデータを得ることがでるため、多くの企業でおすすめのデータ集計方法です。

2. エクセルによる勤怠管理

エクセルによる勤怠管理でのデータ集計は、タイムカード打刻機などで打刻した時間を事務員が手入力でエクセルに記録・集計する方法です。手軽に勤怠管理ができるため、多くの中小企業でエクセルによる勤怠管理が行われています。

エクセル勤怠管理の場合、データ入力は主に手入力であるため、数パーセントの確率で入力ミスが起こります。加えて、データ入力や集計に時間がかかります。

正確性・リアルタイム性・汎用性を確保するためには、前述したように二重チェックや、教育が必要です。これには多くの費用と時間がかかります。

そのためエクセル勤怠管理は、従業員数が10名程度で、簡単な労務管理しかせず、その後の勤怠管理データ利用を考えないのであれば、おすすめです。

簡単な労務管理の目安として「社員やパートなどの違いがあっても集計条件が同じ」「1分単位で残業代を計算している」「交代勤務ではない」「変形労働時間制ではない」といったことがあります。(変形労働時間制とは、特定期間の週平均労働時間が40時間におさまっていれば、1日10時間、週52時間まで所定労働時間を延長できる制度です)

これに対して複雑な労務管理や、勤怠管理データを頻繁に活用するのであれば、エクセル勤怠管理はおすすめしません。なぜなら、良質なデータを低コストで得ることが難しいからです。

エクセルはとても便利なソフトですが、複雑な仕事には向いていません。なぜなら複雑なことをやろうとすると、ミスが起きやすく、良質なデータから遠ざかってしまうからです。

さらにエクセル勤怠管理は、実はコストがかかりやすいです。エクセル勤怠管理は、ほとんどの職場で使われているエクセルで勤怠管理ができるため、一見すると低コストに見えます。しかし、事務員が行うエクセルへのデータ入力や、集計の手間による人件費を考えると、前述の勤怠管理システムの方が低コストです。

私が勤務していた会社では勤怠管理システム導入にあたり、それまで使われていたエクセルによる勤怠管理にいくらコストがかかっているか試算しました。すると、年間50万円ほどかかっていることがわかりました。これと勤怠管理システムのコストを比べたところ、導入・運用費用をトータルで考えても低コストだったため、勤怠管理システムの導入を決めました。詳しくはこちらをご覧ください。

勤怠管理システムの方が低コストになる理由は、勤怠管理システムは、事務作業のほとんどを自動化できるため、事務員の人件費がかからないからです。しかしエクセル勤怠管理では、あまり自動化できないため、事務員の人件費がかかってしまいます。

「従業員一人分のデータ入力・集計に1日あたり1分以上」かかっていれば、システム導入を検討した方が良い可能性があります。まずは勤怠管理の事務作業にかかる時間を測定することをおすすめします。

3. 出勤簿による勤怠管理

出勤簿で勤怠管理をすることでのデータ集計は、「出勤・欠勤」「遅刻・早退」を押印して記録していくシンプルな方法です。ただし、最もおすすめできません。

この方法は、毎月決まった時間を労働したものとみなす「みなし労働制」でよく用いられ、外回りの営業職などに利用されることが多いです。メリットは管理が楽で、低コストな点です。

しかし出勤簿による勤怠管理では良質なデータを得ることができません。なぜなら、「出勤・欠勤」「遅刻・早退」しか分からないからです。それは「良質なデータ」からはほど遠く、その後のデータ利用は期待できません。

例えば長時間労働による労災リスクを抑えるためには、残業時間を正確に知る必要があります。しかし出勤簿ではそれがわからないため、適切な労務管理ができないのです。

近年は、長時間労働に対して社会や行政の目が厳しくなっており、みなし労働制であってもこの方法はおすすめできない方法です。

ここまで説明したデータ集計方法について、以下の表にまとめます。

管理方法 正確性 リアルタイム性 汎用性 事務コスト 特徴
出勤簿 集計なし ○ × 低 管理が楽で低コストだが、大雑把な管理しかできない
エクセル △ △ △ 高 お手軽だが、簡単な勤怠管理にしか向いていない
勤怠管理システム ○ ○ ○ 低 本格的な勤怠管理を低コストでできる

まとめ

勤怠管理のポイントは、いかに低コストで良質なデータを得るかです。きちんとしたデータであれば、労務管理や生産管理、原価管理、投資判断など、企業活動のあらゆる場面に活用できます。

従業員数が少なく、簡単な管理しかしない、また、勤怠データも活用しないのであれば、エクセルを使った勤怠管理でも十分です。しかし従業員数が10名以上であれば、勤怠管理システムを使った方が低コストで、良質なデータを得られます。

近年は、社員に長時間労働を強いる企業は、労働環境の改善を求められる社会環境になっています。これに対応するためにも、勤怠管理システムによるデータ集計をおすすめします。

カテゴリエクセル労務管理

勤怠管理システムによるコスト削減!6つの成功事例から解説

18/02/04 by イクマ ヒロユキ 1 コメント

経営者や管理者であれば、誰でもコスト削減で頭を悩ませていると思います。実は「労働時間の管理を自動化」することでコストを削減できるのです。

自動化するためには勤怠管理システムを導入します。私が勤務していた会社では、システムを導入したところ、年間約50万円のコスト削減メリットがありました。

勤怠管理システムを導入すると、なぜ事務作業を自動化できるのでしょうか。なぜなら勤怠管理は、ルールと手順が決まっているからです。(ルールには労働基準法や会社規則などがあります)

コンピューターは、あらかじめ決めたルールを、繰り返し実行するための機械です。そのため、自動化が可能なのです。

この自動化の仕組みのことを、勤怠管理システムといいます。もしあなたの会社が電卓やエクセルを使って勤怠管理を行っているのであれば、コスト削減のチャンスです。

まだ導入していないのであれば、すぐに導入準備を始めましょう。早く導入するほど、多くのコストを削減できます。

それでは実際に勤怠管理システムを導入して、コスト削減した6つの成功事例をもとに解説していきます。

1. データ入力を自動化してコスト削減

データ入力は、タイムカードの打刻時間をコンピューターに入力するだけの単純な仕事です。しかし、多くの時間がかかります。入力ミスがないように気をつける必要があるからです。

勤怠管理システムを導入することによって、データ入力を自動化できます。その結果、ミスなく一瞬でデータ入力が終わります。

年間110,000円のデータ入力コスト削減

私が勤務していた会社では、タイムカードの打刻時間を、毎日エクセルに手入力していました。対象従業員は50人、データ入力一人あたり30秒、 1日ぶんのデータ入力に25分、1ヶ月分で550分、 1年分で6,600分 = 110時間。時給1,000円としてデータ入力に年間110,000円のコストがかかっていました。試算手順は以下のとおりです。

項目 計算式 数値
1. 必要時間(秒) 30秒 × 50人 1,500秒
2. 必要時間(分) 1,500秒 ÷ 60秒 25分
3. 月に必要な時間 25分 × 22日 550分
4. 年間に必要な時間(分) 550分 × 12ヶ月 6,600分
5. 年間に必要な時間(時間換算) 6,600分 ÷ 60分 110時間
6. 人件費(時給1,000円として) 110時間 × 1,000円 110,000円

勤怠管理システム導入後は、データ入力時間がゼロになり、コストもゼロになりました。データ入力自動化は、打刻機と勤怠管理システムをつなぐことで可能になります。つなぐ方法は、以下の3つがあります。

  1. 打刻機にUSBメモリを挿してデータを吸い取り、勤怠管理システムに入れる
  2. 打刻機と勤怠管理システムを、Bluetoothや社内ネットワークでつなぐ
  3. 打刻機と勤怠管理システムを、インターネットでつなぐ

最適な方法は、会社の規模や、就業形態によって変わります。ですがどの方法を選んでも、事務員のデータ入力がなくなり、その分コストを削減できます。

データ入力は、つきつめると「情報のやりとり」です。打刻機とパソコンとの間で情報をやり取りできればよいのです。

従来は打刻機と、パソコンの間に、事務員が入って「情報のやりとり」をしていました。ですが打刻機とパソコンが直接やりとりした方が、効率が良いのは明らかです。

もしあなたの会社が、手打ちでデータ入力をしているのであれば、コスト削減のチャンスです。

2. 計算を自動化してコスト削減

労働時間の計算は複雑です。そのため、計算に時間がかかり、ミスが起きやすいものです。しかし、勤怠管理システムを導入すれば、労働時間の計算を自動化できます。

自動化によって、計算にかかる時間が短縮できます。計算ミスもなくなります。

なぜ計算に時間がかかり、ミスが起きるのでしょうか。それは、計算条件が複雑だからです。たとえば、以下のようなことになります。

  • 時間を丸めてから計算する。たとえば、15分単位で切り上げる、など。この場合、9:21の打刻なら、9:30から勤務したものとする。
  • 働いた時間帯によって割増賃金率が変わる。PM10:00~AM5:00の間は「深夜労働」となり、無条件で割増賃金率が25%加算される。
  • 変形労働時間制(条件によって残業時間の計算方法を変える制度)を採用している場合は、残業の計算方法が変わる。たとえば、通常は一日8時間以上・週40時間以上の労働を残業として扱うが、ある期間中は一日9時間以上・週48時間以上を残業とする、など。
  • 休日出勤したときの「休日の種類」(出勤した休日が、法律で定められた休日か、会社で定められた休日か)によって割増賃金率が変わる
  • シフトによって勤務開始時間がことなる
  • こうした条件が事業所ごとに違う

こうした条件をすべて考慮に入れて計算するのは難しいものです。ベテラン事務員でも時間がかかり、ミスもゼロにはできません。

しかし勤怠管理システムにあらかじめ計算条件を設定しておけば、それにしたがって計算してくれます。条件が複雑であっても問題ありません。

年間440,000円の労働時間計算コスト削減

この会社では、パートさんが電卓で労働時間を計算していました。下の画像はそのときのタイムカードです。

手書きで書かれた部分が、時間計算の結果の数字です。タイムカードの右から2列目に、打刻機によって計算された数字が印字されていますが、あてになりません。なぜなら、この会社独自の計算方法があるからです。打刻機に細かい設定はできないのです。

メーカーにも問い合わせましたが、複雑な計算はできないと言われました。仕方がないので電卓で計算していたのです。

対象従業員は50人、計算一人当たり2分、一日分の計算をするのに100分。1ヶ月分の計算をするのに2,200分。12カ月分で24,600分 = 440時間。時給1,000円として、労働時間計算に年間440,000円のコストがかかっていました。

項目 計算式 数値
1. 必要時間(分) 2分 × 50人 100分
2. 月に必要な時間 100分 × 22日 2,200分
3. 年間に必要な時間(分) 2,200分 × 12ヶ月 26,400分
4. 年間に必要な時間(時間換算) 26,400分 ÷ 60分 440時間
5. 人件費(時給1,000円として) 440時間 × 1,000円 440,000円

勤怠管理システム導入後は、ボタン1つで計算が終わるようになり、コストがゼロになりました。

コンピューターは、ルールが決まっている計算をするための機械です。勤怠管理は、法律や会社規則でルールが決まっています。そのため計算を自動化できます。

自動化できるのであれば、人がやるよりもコンピューターがやった方が良いです。その方が圧倒的に速く、ミスも少なく、コストもかからずに済みます。

3. 紙のタイムカードをペーパーレス化してコスト削減

勤怠管理システムを導入することで、ペーパーレスを実現できます。その方法には、ICカード型・生体認証型(指紋・指静脈・顔認証など)・スマホ型(位置情報)など、さまざまな方法があります。

紙のタイムカードを使い続ける限り、タイムカード代(1枚10~20円)と、前準備コスト(タイムカードに従業員の名前を打刻するコスト。月に1回・一人10秒)や、保管コストがかかります。

しかし、勤怠管理システムであれば、どの方法を選択しても、こうしたコストがかかりません。ただ、ペーパーレスで勤怠管理をするときに、ひとつ注意があります。

紙のタイムカードであれば、従業員本人が労働時間を確認できます。しかし、ペーパーレスにすると、労働時間をパソコンの画面上でしか確認できなくなってしまいます。

なかには、労働時間をごまかされていると考える従業員がでてくるかもしれません。そう思われないように運用する必要があります。

たとえば、「従業員の問い合わせに対してすぐに答えられるようにしておく」「本人がパソコン画面で確認できるようにしておく」といった対応が考えられます。

勤怠管理システムは、問い合わせ対応も、本人による確認も、簡単な操作で行うことができます。いちど操作を覚えてしまえば簡単に扱えます。

このようにペーパーレス化をすることで、紙のタイムカード代を削減できます。

4. 申請書をペーパーレス化してコスト削減

勤怠管理には、さまざまな申請書がついてまわります。たとえば、残業申請書や、休日出勤届、有給休暇申請書などです。

勤怠管理システムを導入することで、申請書をペーパーレスにできます。その結果、業務効率化とコスト削減ができます。 なぜなら、コンピューター上ですべての申請・承認・事務処理が終わるからです。

紙の申請書の流れを簡単に表すと次のようになります。

  1. 従業員は、所定の用紙に必要事項を書き込む
  2. 管理者は、申請書を承認し、事務部門にわたす
  3. 事務員は、申請書をもとに必要な処理をする

これをコンピューター上で行うための機能を、「ワークフローシステム」といいます。この機能にはコスト削減ポイントが2つあります。

歩行の削減

1つ目のポイントは、申請書を受け渡すための「歩行の削減」です。たとえば、申請書置き場に用紙を取りに行くための歩行や、上司に提出するための歩行、事務部門へ提出するための歩行があります。

なぜ歩行の削減が、コスト削減につながるのでしょうか。それは、社内用の申請書を持って歩いている間は、何も付加価値を生み出しておらず、 1円の儲けにもならないからです。

勤怠管理システムを導入すると、コンピューター上で申請・承認・事務処理が完結します。席を離れる必要がなくなり、歩行の削減ができます。

たかが歩行、と思うかもしれません。ですが製造業では、歩行の削減は改善活動の基本です。作業者が持ち場から離れる時間が長くなると、その分だけ製品の完成が遅れるからです。ですから、秒単位で歩行を削減します。これはどの業種でも有効です。

事務員であれば、事務処理している間が儲けにつながる活動です。歩行時間が短いほど処理できる量が増えます。

運送業のトラック運転手の場合だと、お客様から預かった荷物を運んでいる間だけが、儲けになる活動です。申請書を運んでも1円も儲かりません。

飲食店のフロアスタッフであれば、お客様と接している時間だけが、儲けにつながる活動です。料理を運ぶ時間も短い方が良いのです。

照らし合わせ作業の削減

2つ目のポイントは、申請書と勤務状況の照らし合わせ作業です。単純作業ですが、給与に直結するためミスが許されない作業です。そのため時間とコストがかかります。

  • 有給休暇の申請日に、申請どおり休んだのか
  • 振替休日・代休の対象日に休んだのか
  • 残業申請と実際の帰社時間を照らし合わせて、労働時間を計算するための基準時間を確認する

以上のことを照らし合わせます。

勤怠管理システムを導入することで、照らし合わせを自動化できます。なぜなら必要なデータがすべて、コンピューターの中に入っているからです。

有給申請の照らし合わせ

  1. 有給申請日が「2016/09/01」であれば、実際に「2016/09/01」に休んだかどうか照らし合わせます
  2. 休んでいれば有給として処理し、有給残日数を1日減らします
  3. 休んでいなければ、出勤として扱い、有給残日数は減らしません

残業申請の照らし合わせ

  1. 残業申請時間が「19:30」であれば、実際に何時まで残業したか照らし合わせ、事務処理します
  2. 「19:30」より、後に帰っていれば「19:30」までを労働時間として計算します
  3. 逆に、申請時間である「19:30」より、前に帰っていれば、実際に帰った時間までを労働時間として計算します

システム上で申請をすると同時に、そのデータがコンピューターに記録されます。今まで「書類」と「目視」で確認していた作業が、コンピューターにより自動化されます。

申請と確認業務の本質は、「情報のやり取り」です。これはコンピューターが得意とすることですから、自動化が可能なのです。

このように、申請書をペーパーレス化することで、ムダな歩行の削減と、照らし合わせ作業を削減できます。それがコスト削減になります。

5. 不正打刻を防止してコスト削減

不正打刻は、余計なコストがかかるだけでなく、モラルが低下し、内部統制(不正や問題を予防すること)に対して悪影響を与えます。

従業員が少なく、経営者や管理者の目が届くうちは、不正が起きにくいと思います。しかし従業員が増え、目が届かなくなってくると、一定の割合で不正が行われます。

遅刻しそうになった人が、他の人にタイムカードを押してもらう、などの手口があります。

勤怠管理システムを導入し、「本人でないと打刻できない」ようにすれば、不正打刻を防止できます。

その方法には、指紋で識別する、本人のスマートフォンを利用する、SuicaなどのICカードを利用する、といった方法があります。

紙のタイムカードで不正打刻を防ごうと思ったら、タイムカードを持ち帰ってもらうしかありません。しかし、タイムカードを忘れたり、無くしたりする従業員が必ずでてきます。現実的ではありません。勤怠管理システムであれば、これが可能になります。

不正打刻は、大前提として不正行為をする人に問題があります。しかし、それができる環境にも問題があります。

会社の金庫に鍵がかかっていないことを、全従業員が知っていた場合、盗難を防ぐことができるでしょうか。できないはずです。そもそも、盗難できないように鍵をかけるべきです。実際、すべての会社がそうしています。

勤怠管理も同じで、そもそも不正打刻ができないようにしましょう。システムを導入すれば実現できます。

金庫破りをすればお金を盗めるのと同様に、システムに侵入すれば不正打刻ができます。しかし、金庫破りをしてまでお金を盗む人が少ないのと同様に、システムに侵入して不正打刻をする人も少ないです。

ですから、勤怠管理システムを導入することで不正打刻を防止することができるようになります。

6. 給与計算ソフトと連携してコスト削減

給与計算ソフトで給与計算をするときに、エクセルに入力されたデータを見ながら、給与計算ソフトにデータを手入力していませんか。もしそうなら、業務効率化とコスト削減ができます。

なぜなら、エクセルに入力されたデータも、給与計算システムもコンピューターの中にあるからです。システムはお互いにデータのやり取りができますから、手入力の必要がなくなります。先ほどご説明した、タイムカードの時間入力を自動化するのと同じパターンです。

システム同士のデータのやりとりは、CSVファイルを使って行います。CSVファイルとは、コンピューターがデータを扱いやすいように、データの並び順を整理したファイルのことです。

たとえば勤怠データをCSV出力すると、下の画像のようなCSVファイルが出来上がります。

人が見ても何がなんだか分かりません。しかしコンピューターにとっては、データを効率よく処理できるようになっています。

一般的に「システム」と呼ばれるものは、「CSV出力」機能が備わっています。操作方法に多少の違いがありますが、基本的には同じです。

操作は簡単で、何回かマウスをクリックするだけで操作が終わります。何度か操作をすれば覚えられますから心配いりません。なお、「同じメーカーの勤怠管理システムと、給与計算システム」であれば、もっと簡単に連携できる場合があります。

CSVファイルによる、ソフト同士のデータ連携によって入力時間を短縮し、入力ミスをなくすことができます。

年間20,000円のコストを削減し、従業員からのクレームも減少

さきほどの会社では、エクセルに入力された勤怠情報を印刷し、それを見ながら労働時間を給与計算ソフトに打ち込んでいました。

従業員は50人。給与計算ソフトへの入力一人当たり2分。ひと月の給与計算に合計100分。1年間で1,200分。時給1,000円として年間で2万円のコストがかかっていました。

それだけではなく、たびたび入力ミスがあり、従業員からクレームがありました。給与計算を間違うと、会社と従業員の間の信頼関係が傷つきます。内部統制にも悪影響を与え、手戻りが発生し、余計なコストがかかります。

事務作業は、人の手が加わるほどミスが発生します。なぜなら人は間違えるものだからです。そのため、何度もチェックしてミスを防ぎますが、コストがかかります。ミスもゼロにはできません。

システム導入前は、勤怠管理から給与計算までのすべてを、手作業で行っていました。どこか1カ所でも間違えると給与計算に間違いが起こります。

しかしコンピューターは、ほとんど間違えません。そのためコストを削減し、ミスも削減できるのです。

勤怠管理システム導入後は、簡単な操作で給与計算ソフトの入力が終わるようになりました。 全従業員の給与計算が、1回あたり2分で済むようになり、ミス、クレーム、コストが削減できました。

まとめ

勤怠管理システム導入することで、事務作業の効率化と自動化ができます。

  1. データ入力の自動化
  2. 計算の自動化
  3. タイムカード代の削減
  4. ペーパーレスの実現
  5. 不正打刻の防止
  6. 給与計算ソフトと連携

勤怠管理は法律や会社規則でルールが決まっています。ルールや決まった仕事をするとき、コンピューターは人間よりも圧倒的に優秀です。そのためミスを減らし、コストを削減できます。

しかし、システムを導入には、今までの仕事のやり方を変える必要があります。それに対して「新しいやり方を覚えられるか」「何か不都合は出ないか」といった悩みが出ると思います。

私の事例では、問題なく導入できました。定年まぎわのパートさんが、システムを触って勤怠管理事務を担当していました。パソコンが苦手な方なので心配だったのですが、2週間ほどで新しいやり方を覚えられました。

勤怠管理を人が行っている限り、ミスは減りませんし、コストも減りません。もしあなたの会社で、勤怠管理を人が行っているのであればコスト削減のチャンスです。

会社の規模に合った勤怠管理システムを導入すれば、すぐに投資費用を回収できます。早く導入するほど、より多くのコストを削減できます。まだ導入していないのであれば、今すぐ導入することをおすすめします。

カテゴリエクセル労務管理

エクセル勤怠管理で労働時間計算が微妙に狂う理由と簡単な対処方法

18/02/04 by イクマ ヒロユキ コメントを書く

エクセルで勤怠管理をするときに必ず労働時間計算を行いますが、このとき注意しなければならない問題があります。それは「時間計算の計算過程で誤差がでることがある」というものです。

誤差が出ると給与計算や労働基準法遵守に影響するため、労務担当者にとっては頭の痛い問題です。しかし時間計算機能のある電卓で計算すると誤差がでないため、中には電卓で計算した労働時間を、エクセルに手入力する方もいます。

電卓で時間計算する場合、従業員が数十人以上いると、1ヶ月分の労働時間計算だけ数日かかります。しかし電卓計算と手入力は、かえって計算ミスしやすく、また効率がよくありません。なんとかエクセルで一気に計算したいものです。

このような時間計算の誤差を解決する方法はいくつかありますが「TEXT関数」を使う方法がオススメです。電卓で計算する必要も、エクセルに手入力する必要もなくなり、正確で効率的に労働時間計算、給与計算ができるようになります。

そこでこのページでは、誤差が出てしまう原因と、正確に時間計算する方法を解説していきます。

どういうときに誤差が出るのか

実は時間計算の誤差問題はエクセルに限った話ではなく、コンピューターを使った時間計算すべてで起きる可能性がある問題です。

具体的には、次の2つのケースで誤差が出ます。

  1. 「時間計算した時間」と、「直接入力」したものを「比較」したとき
  2. 「時間計算した時間」を「丸めた(切り上げ・切り捨て)」とき

それぞれ解説していきます。

1. 「時間計算した時間」と、「直接入力した時間」を「比較」したとき

下の図は、青く囲われた「直接入力した時間(8:00)」と、赤く囲われた「時間計算した時間」(退勤時間 – 出勤時間 – 休憩時間で計算)をIF関数で「比較」したときの図です。

IF関数では、赤く囲われたセルと、青く囲われたセルを比較し、時間が一致していたら「残業なし」、一致していなければ「残業あり」にしています。全て「残業なし」になるのが正解です。しかし結果は、正しくありません。

これはでは残業代計算したり、労務管理したりする場合に問題になる可能性があります。なぜ誤差が出るのかは後ほど解説していきます。

2. 「時間計算した時間」を「丸めた(切り上げ・切り捨て)」とき

下の図は、「退勤時間 – 出勤時間を15分で丸めた(切り捨て)」たときの図です。丸め後の時間は「7:00」が正解ですが、誤差のせいで黄色く塗ったセルは「6:45」になってしまっています。これは正しくありません。

このケースでも、やはり給与計算、残業代計算、労務管理で問題になります。上の図では15分の差が出てしまっていますので、時給1,000円だと250円の差です。このようなミスがある場合、労働基準法違反の可能性もあり、従業員から会社への信用がなくなります。

なぜ誤差が出るのかと、対策を知ることで正確で効率的に事務作業できるようになりましょう。

なぜ誤差が出るのか

誤差が出るのは、コンピューターは時間計算するとき「シリアル値で計算する」というルールに基づくからです。シリアル値とは1日を数字の1で表し、時刻を24で割った数値で表した数値です。例えば9:00のシリアル値は、「9 ÷ 24」した数値である「0.375」が9:00のシリアル値になります。

シリアル値にするとき、時刻が24で割り切れる数値であれば問題ないのですが、多くの場合、割り切れません。例えば4:00のシリアル値は「4 ÷ 24 =0.16666666666666……(無限に続く。循環小数といいます)」で割り切れない数値になります。これは分数 1/6が0.16666666666666……になるのと同じ理由からです。

いくらコンピューターが計算能力に優れているとはいえ、無限に続く数値を扱うことはできません。そのため、どこかで四捨五入します。

誤差の原因は、エクセルの計算能力の限界

一般的にエクセル内部では循環小数を15桁で四捨五入します。4:00の場合は0.166666666666667になります。実は、これが誤差を生む原因になります。

循環小数であっても、足し引き、丸め、比較しなければ問題ありません。具体的には、出勤時間・退勤時間などをセルに入力する場合は、なんら問題ありません。なぜなら時刻を直接入力したときの誤差は、実務上問題ない誤差だからです。

ところが、出勤時間・退勤時間を使って労働時間を計算したり、所定労働時間と比較したりするときに問題がでます。なぜなら誤差がある数値を使って計算すると、誤差が大きくなり、実務上問題が出るからです。

下の図の黄色く塗ったセルは、誤差が大きくなる例です。D列の「退勤時間 – 出勤時間」はすべて「7:00」です。しかし、E列の黄色く塗ったセルは最後の桁(15桁目)で誤差が出ています。

さらに、F列で丸め処理を行うとシリアル値が大きく変わっているのがわかります。これが、労働時間計算が狂ってしまう原因です。

こうした誤差は給与計算などに大きく関わるため、確実に修正しなければなりません。

関数を使って、セルへ直接入力したときと同じ状態にする

誤差を無くす最も簡単な方法は、TEXT関数とVALUE関数を使うやり方がおすすめです。

さきほど、「時刻を直接入力するときは、誤差が最小になり、実務上問題ない」と説明しました。この方法を使って正確な労働時間計算ができます。

TEXT関数とVALUE関数を使うことで、時間計算結果を、「時刻を直接入力」したときと同じシリアル値に修正することができます。

 

下の図は、時間丸めの誤差を、TEXT関数とVALUE関数を使って修正した例です。

TEXT関数とVALUE関数を使わなければ、誤差によっておかしな計算結果になります(黄色いセル)。しかしM列では、TEXT関数とVALUE関数を使い誤差を修正することで、正確な時間計算をすることができました。

TEXT関数とは

TEXT関数とは、「値」を「文字列に変換」する関数です。値は、上の例で「K2(退勤時間) – J2(出勤時間)」の時刻(シリアル値)を指定します。「表示形式」では、どのように書式設定するかを指定します。

労働時間計算では一般的に“h:mm“、計算結果が24時間以上になるときは“[h]:mm”と設定します。(書式設定の詳細ついてはこちらをご覧ください)

“h:mm”や”[h]:mm”と設定することで、計算によって求められた値を時間と分で丸め処理(切り捨て)します。つまり、誤差が生じる部分を切り捨て、「セルに直接入力」したのと同じことなります。

さきほど、「時刻を直接入力するときは、誤差が最小になり、実務上問題ない」と説明しましたが、TEXT関数を使うことでこの効果を得ることができます。

値を文字列に変換とは?

「値を文字列に変換」というと「値だって文字はないのか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。しかしながら、コンピューターの中では値と文字は別物として扱われます。例えば「1:00」は裏で「0.041666…」という値(シリアル値)を持っています。

ただし、文字列に変換された「1:00」は裏でシリアル値を持たず、「イチ コロン ゼロ ゼロ」という文字としてコンピューターに扱われます。そのため、文字列として入力された時刻は値ではないため、本来であれば計算や比較ができません。

しかし、エクセルには「文字列として入力された数字は、値とみなす」という計算補助機能があるため、私たちユーザーは、値や文字列だなどと、ややこしいことを意識せずにすんでいます。ただ、この計算補助機能は完全ではありません。そのためVALUE関数が必要になります。

VALUE関数とは

VALUE関数とは、文字列を数値に変換する関数です。さきほど説明したように、TEXT関数だけでも計算補助機能があるため、問題ないことも多くあります。しかし計算補助機能は完全ではありません。具体的には、文字列と時刻を比較するときは補助機能が働きません。

下の図は、さきほども登場した「時間を比較するときの誤差」の図です。E列の残業有無ではIF関数を使って、所定労働時間(オレンジ色)に入力された「値」と「労働時間」を比較し、一致していれば「残業なし」、一致していなければ「残業あり」になります。全て「残業なし」が正解ですが、黄色く塗ったセルは「残業あり」と正しくありません。

誤差を修正するためにTEXT関数だけを使ったのがF列ですが、全て「残業あり」になってしまいました。これも正しくありません。原因は所定労働時間に入力された「値」と、TEXT関数で修正された「文字列」を比較したためです。このように、文字列と値を比較するときは計算補助機能が働かず、別物扱いになります。

そのため、G列ではTEXT関数で文字列に修正されたものを、VALUE関数でもう一度数値に変換します。こうすることで値同士を比較することになり、正しい結果になります。

 

応用編
VALUE関数の代わりに、TEXT関数に1を掛けても数値に変換できます。上の図を例にすると、「VALUE(TEXT(D5,”h:mm”))」と「TEXT(D5,”h:mm”)*1」は同じ結果になります。簡潔に書くことができるため、慣れてきたらこちらのほうがオススメです。

その他の方法

TEXT関数、VALUE関数を使って誤差を修正する以外の方法に、「シリアル値を10進法に変換し、誤差が生じない桁数で計算してから60進法に戻す」などの方法があります。

具体的には、分単位の精度を求めるのであれば、24(時間)×60(分)=1,440をシリアル値に掛けて計算した後に1,440で割り、再度シリアル値に戻します。秒単位の精度ならばさらに60(秒)を掛けて86,400を掛けて計算し、86,400で割り、シリアル値に割り戻します。

しかし、この方法は計算式が長く複雑になり、ミスが起きやすくなるためオススメできません。実務では正確性と効率が求められますので、一番簡単なTEXT関数とVALUE関数を使った方法がオススメです。

まとめ

労働時間計算を正確に行わなければ、給与計算や労働基準法遵守に影響します。エクセルで勤怠管理をする以上、時間計算誤差の問題は必ず生じる問題です。電卓で計算すれば時間計算誤差は生じませんが、効率的ではありません。TEXT関数とVALUE関数を使って正確に時間計算し、労務管理業務を効率的にすすめましょう。

カテゴリエクセル労務管理

低コストで変形労働時間制を運用し、残業代を削減する方法

18/02/04 by イクマ ヒロユキ コメントを書く

変形労働時間制という制度を簡単に説明すると、「ある期間の労働時間を平均したときに、週40時間に以内であれば、1日8時間以上働いても残業として扱われない」という制度です。

業務に繁忙期があったり、月初月末で仕事量が変わったりする場合、この制度を有効活用することで、残業代を削減でき、従業員も忙しくない日は早く帰ることができるようになります。

ただ、この変形労働時間制は、ルールが複雑で制度を利用しにくいのも事実です。また、変形労働時間制をよく理解していても、実際の運用には多くの労力がかかります。労力をかけずに変形労働時間制を運用するには、勤怠管理システムを活用するのが最も低コストです。

なぜ変形労働時間制の運用を人手で行うよりも、勤怠管理システムを導入した方が低コストになるのでしょうか。なぜなら変形労働時間制には、ルールが多くあり、複雑だからです。

そこでこのページでは、変形労働時間制のルールと、勤怠管理システム有効活用のポイントを解説していきます。

変形労働時間制とは メリット・デメリット

メリット : 業務にメリハリをつけられ、残業代を削減できる

変形労働時間制のメリットには2つあります。

  1. 繁忙期の法定労働時間を延長することで残業代削減できる(法定労働時間とは、法律で定められた労働時間で、1日8時間、週40時間以上が残業になる)
  2. 繁忙期で延長した分、閑散期は早く帰れる

デメリット : 制度がわかりにくく、事務員のコストが増える

デメリットは制度が複雑でわかりにくいことです。従業員の立場からは自分の残業時間がわかりにくく、会社の立場からは制度が複雑なため事務コストがかさむことがデメリットです。

しかし、後述する勤怠管理システムを用いることで、労働時間計算は自動化でき、事務員のコストを削減することができます。従業員ごとの残業時間の問い合わせにも即答できます。「システム導入コスト」「事務員のコスト」削減と、残業の削減を比較し、導入を検討するとよいでしょう。

変形労働時間制の概要

どのように制度を使うのか?

再び変形労働時間制という制度を簡単に説明すると、「ある期間の労働時間を平均したときに、週40時間以内であれば、1日8時間以上働いても残業として扱われない」という制度です。

通常の労働制度では1日の法定労働時間の上限は8時間です。上限である8時間を超えて労働する場合は「時間外労働(残業)」になり、割増賃金(残業代)支払いの対象になります。

ただし、業務量にあまり波がない業界や職種であれば特に問題はありません。

ところが、業務量に波がある業界、例えば引越・除雪・観光・ウェディング・飲食・ホテルなどの職種は年間を通じて業務量に波があります。また、職種では労務・経理は、月末に給与計算や、各種支払い業務などがあり、月初月末で業務量が違います。そのため、月初は手待ち時間(暇な時間)があるが、月末は忙しく残業続き、ということがあります。

従業員の立場からは「暇な時期に時間を持て余すなら早く帰りたい」、会社の立場からは「時間外労働を抑えたい(残業代を抑えたい)」と考えるようになります。変形労働時間制を運用することで両者の要望をかなえることができるようになります。

変形労働時間制の種類

変形労働時間制にはいくつかの種類があります。

  1. 一週間単位の変形労働時間制
  2. 一ヶ月単位の変形労働時間制
  3. 一年単位の変形労働時間制(一か月を超え、一年以内)
  4. フレックスタイム制(フレックスタイム制は上記3つの変形労働時間制とは制度が大きく異なるためこのページでは解説しません)

以下では、一週間単位、一か月単位、1年単位についてそれぞれ解説していきます。種類によって、手続き方法や運用方法、労働時間の上限に違いがあります。

共通しているのは、「4/1の所定労働時間は10時間、4/2は7時間、4/3日は5時間、4/4は・・・」のように、あらかじめ日ごと労働時間を設定し、書面で従業員に通知しておくことと、労働基準監督署へ労使協定の届け出ることです。

各変形労働時間制の違いを以下の表にまとめます。

一週間単位 1ヶ月単位 1年単位
対象期間 一週間 一か月以内 1か月を超え1年以内
スケジュール決定の期限 変形労働の週が始まるまでに 変形労働の週が始まるまでに 変形労働を開始の30日前までに
労働時間の振替 前日までに書面で労働者に通達 ✕ ✕
労働時間の上限 一日10時間 なし 一日10時間、一週52時間
残業代の削減効果 ✕ 〇 △
4週4休制との併用 ✕ 〇 △
特例44時間制との併用 ✕ 〇 ✕

 

その他にも細かい違いがありますので、以下で順番に解説していきます。

一週間単位の変形労働時間制

週末は平日の倍以上のお客様がいる、というように一週間の中でお客様の人数が大きく変動する業種に適用することができます。制度適用には次の要件を満たす必要があります。

1. 従業員が30人未満の店舗や施設

2. 労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出る(店舗や施設ごと)

3. 一日の所定労働時間の上限を10時間、一週間の所定労働時間の上限は40時間とする

4. 前週末までに、日々の労働時間を従業員に書面で通知する

5. 通知した労働時間を変更する場合は、前日までに書面で通知する

メリット

メリットは、2つあります。

1つは、労働時間にメリハリをつけ、残業代の削減が期待できることです。

2つめは、緊急でやむを得ない場合(天災など)に限り、一度組んだ変形労働時間制シフトを変更できることです。ただ、緊急でやむを得ない場合、と但し書きがあるため、使い勝手はよくありません。

デメリット

デメリットは、特例44時間制が利用できなくなることです。特例44時間制とは、①従業員が常時10名未満の店舗・施設で、②小売業・サービス業・旅館・飲食店などに適用できる制度です。通常の法定労働時間は週40時間が上限ですが、特例44時間制が適用されると、法定労働時間を週44時間まで延長することができます。

時間外割増が1,500円の社員に特例44時間制を適用した場合、1,500円 × 4時間 × 4週 = 月 24,000円、残業代を削減できます。一週間単位の変形労働時間制と、どちらがメリットがあるかは会社ごと判断が必要です。

シフトの例(休憩時間が1時間含まれているものとする)

週の法定労働時間  1ヶ月28日 1ヶ月29日 1ヶ月30日
4月1日(日) 10:00 19:00 8:00
4月2日(月) 休日
4月3日(火) 14:00 21:00 6:00
4月4日(水) 休日
4月5日(木) 8:00 16:00 7:00
4月6日(金) 13:00 23:00 9:00
4月7日(土) 11:00 22:00 10:00
労働時間合計 40:00

 

一週間単位の変形労働時間制では、上の表のように所定労働時間の上限である8時間を超えてシフトを組むことができます。4月6日は9時間、7日は10時間が所定労働時間になります。

通常であれば、8時間を超え働いた分は残業になりますが、変形労働時間制で延長されている日は、8時間を超えても残業になりません。そのため、うまくシフトを組むことができれば残業代削減が期待できます。

一週間単位の変形労働時間制は、使いどころが難しい制度です。変形労働時間制を運用する場合、次に説明する一ヶ月単位の変形労働時間制の方が制限が少なく使いやすいため、オススメです。

一ヶ月単位の変形労働時間制

一ヶ月単位の変形労働時間制は、変形期間内の所定労働時間が平均40時間(特例は44時間)以内であれば、1日8時間、週40時間の法定労働時間の枠を超えて労働させることができる制度です。

一ヶ月単位の変形労働時間制を運用するためには、就業規則または労使協定を労働基準監督署へ届け出ます。就業規則または労使協定に記載する内容は次の内容です。

1. 対象労働者の範囲

特定の部署、例えば経理部あるいは営業部だけや、個人ごとに一ヶ月単位の変形労働時間制を適用することもできます。

2. 対象期間および起算日

例 : 毎月1日を起算日とする

3. 月の開始前までに、シフト表や会社カレンダーであらかじめ労働日ごとの労働時間を決める

4. 労使協定の有効期間を決める

また、一か月単位の変形労働時間制は、週平均40時間以内に収めなければなりません。そのため、変形期間の法定労働時間の上限を次の計算で求める必要があります。

一ヶ月の労働時間上限 = 40時間(※) × 対象期間の暦日数 ÷ 7
※特例44時間制の場合は、44時間

週の法定労働時間  1ヶ月28日 1ヶ月29日 1ヶ月30日 1ヶ月31日
40時間 160.0時間 165.7時間 171.4時間 177.1時間
44時間 176.0時間 182.2時間 188.5時間 194.8時間

 

メリット

特例44時間制との併用が可能なこと、休日の多い月だと残業代削減効果が大きいこと、4週4休制との併用が可能であることがメリットです。残業の削減効果は下のシフトの例で解説します。

4週4休制とは、4週の間で4日休みがあればよい、という制度です。極端に言うと、最初の1週間のうち4日を休みにし、残り3週間を無休で働かせることもできます。つまり、かなり柔軟なシフトを組むことができます。

デメリット

一週間単位の変形労働時間制と違い、労働時間の振り替えがでず、一度決めた所定労働時間を変えられないことがデメリットです。そのため、予想外に残業代が発生することがあります。下のシフトを例にすると、休日である8月5日に出勤すると労働時間全てが残業割増の対象になります。そのため、頻繁に振り替えが発生するのであれば一ヶ月単位の変形労働時間制を採用しない方がよいでしょう。

シフトの例(週の法定労働時間は40時間)

変形労働時間で所定労働時間の上限が延長された日(8月7日以降)は、1日8時間以上働いても残業になりません。8月7日であれば、所定外労働時間が9時間に延長されています。9時間労働すると通常であれば1時間の残業代が発生しますが、変形労働時間制では延長された時間まで働いても残業代が発生しません。

上の例では、一ヶ月単位の変形労働時間制の効果で残業にならない時間の合計は25時間です。時給1,500円であれば、1,500円 × 1.25(時間外割増) × 25時間 = 46,875円分の残業代削減になります。8月のように祝日が多い月ほど残業代削減効果が高くなります。ただし、先述したように休日はきっちり休むことが前提です。

一ヶ月単位の変形労働時間制は、残業代削減効果と4週4休制、特例44時間制との併用が可能なため、一週間単位の変形労働時間制よりも使いやすい制度です。制度運用の手間はかかりますが、多くのメリットがありますので業務に忙しい時期と暇な時期があれば、制度運用をオススメします。

一年単位の変形労働時間制

一年単位の変形労働時間制は、一ヶ月以上一年以内の期間を平均して週所定労働時間が40時間以内であれば、1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。観光業や、引越業、除雪など、1年の中で繁忙期と閑散期がある業界に向いています。

一年単位の変形労働時間制を運用するには、一ヶ月単位の変形労働時間制と同様、就業規則または労使協定を労働基準監督署に提出します。就業規則または労使協定に記載する内容は一ヶ月単位の変形労働時間制と同様です。

私が勤務していた会社は9月~11月が繁忙期だったのですが、その3ヶ月間の休日は日曜日だけ、1日の所定外労働時間は基本的に9時間でした。その代わりに休日も多く設定されていました。この制度のおかげで、繁忙期に長く働き、閑散期には早く帰る、というメリハリのある働き方ができ、大きな残業代削減効果がありました。

一年単位の変形労働時間制を運用するためには、他の変形労働時間制と同様、就業規則または労使協定を労働基準監督署へ届け出ます。就業規則または労使協定に記載する内容は次の内容です。

1. 対象労働者の範囲

特定の部署、例えば経理部あるいは営業部だけや、個人ごとに一ヶ月単位の変形労働時間制を適用することもできます。

2. 対象期間および起算日

例 : 毎年4月1日から3月31日

3. シフト表や会社カレンダーであらかじめ労働日ごとの労働時間を決める

変形労働期間が始まる30日前までに

4. 特定期間

対象期間中の特に業務が繁忙な期間

5. 労使協定の有効期間を決める

導入のポイント

一年単位の変形労働時間制は、その他にも制約がありますので、解説していきます。

1. 労働日数の上限および休日数

対象期間が1年間の場合、労働日数の上限は280日と決まっています。対象期間が一年未満の場合は、下記計算式で上限日数が決まります。

労働日数の上限 = 280日 × 対象期間の暦日数 ÷ 365(小数点以下切り捨て)

例 : 対象期間が4/1~9/30の場合(暦日数は182日)
280 × 182 ÷ 365 = 139.6 となり、4/1~9/30の間の労働日数は139日が上限です。

2. 連続労働日数と、特定期間

従業員に連続して働かせることができる日数は、原則として最長6日でです。しかし、「特定期間」を設け、「週1回の休日」を確保することで連続労働日数を最長12日まで伸ばすことができます。

上のカレンダーを例にすると、4月1日と4月14日を休日にすれば、「週1回の休日」を確保でき、連続労働日数が12日になります。

特定期間とは、変形労働時間制対象期間の内、特に忙しい時期のことです。引越業であれば3月、4月が特定期間になります。

3. 一日・一週間の所定労働時間の上限

一年単位の変形労働時間制は、一日・一週間の所定労働時間の上限が決まっています。

1日の所定労働時間の上限 10時間
1週間の所定労働時間の上限 52時間

さらに、変形労働対象期間が3か月を超えるときは、限度時間の設定に制約が加わります。

  1. 48時間を超える所定労働時間を設定した週が、連続3週以内であること
  2. 変形労働対象期間を3か月に区切ったときに、週所定労働時間が48時間を超える週が3週以内であること。
NGな例

左の例では、12週から15週まで48時間を超える週が4回連続しているため、NGです。右の例では、最初の3か月はOKですが、2回目の3か月の中で、48時間を超える週が4回以上あるため、NGです。

 

OKな例

一見すると、NGに見えそうですが、OKです。48時間を超える週が連続3回まで、最初の3か月の中で2回、2回目の3か月の中で3回までなのでOKになります。

メリット

1年間を通して週平均40時間を達成すればよいため、残業代削減効果が高いこと、労働者にとってもメリハリのある働き方ができることがメリットです。下のシフトを例にすると、所定労働時間が9時間である水色の日が年間93日あり、時給1,500円の従業員であれば、1,500円 × 1.25(時間外割増)× 93時間 =174,375円の残業代削減効果があります。

デメリット

一度決めた総労働日数と、総労働時間を修正することができません。また、所定労働時間の設定を30日前までに行わなければならず、一度決めた時間は変更できません。そのため、計画と実際が大きく変わると、かえって残業代が増えてしまいます。

 

シフトの例

一年単位の変形労働時間制は、シフトやカレンダーを変形労働時間制対象期間が始まる30日前までに決めなければならなかったり、所定労働時間の上限の上限があったりと、制約もあります。

しかし、一年単位の変形労働時間制は、残業代削減効果が大きな制度です。有効活用できれば大きなメリットがあるため、導入を検討してみてはいかがでしょうか?

 

低コストで変形労働時間制を運用したいときは勤怠管理システムを使う

これまで解説したように、変形労働時間制のルールには「所定労働時間が日によって違う(所定労働時間とは、1日何時間働くかという会社との約束事です)」というものがあります。

従業員が残業する場合、所定労働時間を超えた労働時間が残業になります。通常であれば8時間を超えた労働時間を残業として計算します。しかし、変形労働時間制の残業時間計算の場合は所定労働時間が一定ではないため、「3月21日は所定労働時間が9時間。3月22日は所定労働時間が7時間」というように確認が必要になります。

このとき所定労働時間を間違えてしまうと、労働基準法違反や、給与計算間違いにつながります。勤怠管理システムを利用せずに制度を間違いなく運用するには、複数の担当者がダブルチェックするなど、多くの労力をかける必要があります。ミスが許されない仕事なので、大きなストレスにもなります。

しかし、勤怠管理システムであればダブルチェックは不要です。システムにあらかじめ日々の所定労働時間を設定しておけば、自動的に労働時間計算します。コンピューターは、確認ミスや計算ミスをしませんので、ダブルチェックが不要になります。

労務担当者の人件費と、システムの導入コスト・運用コストを比較すると、システムを導入した方が低コストになります。また、労務担当者のストレス軽減にもなるため、労務担当者からも大変喜ばれます。(私が勤務していた会社でも大変喜ばれました)そのため、変形労働時間制の運用には勤怠管理システムを使うのがおすすめです。

まとめ

変形労働時間制は、残業代削減できたり、メリハリのある働き方ができたりする、会社にとっても従業員にとってもメリットのある制度です。しかし、制度が複雑で給与計算ミスもしやすい制度です。

勤怠管理システムを使うことで、給与計算ミスを防ぐことができます。変形労働時間制を導入するのであれば勤怠管理システムも一緒に導入することをオススメします。

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